第3章

夜の八時。私はシルクのシーツに身を丸め、意図的に不自然な火照りを頬に浮かび上がらせた。深呼吸を一つしてから、健一の携帯に電話をかける。

「健一?」私は声を弱々しく、か細く装った。「熱があるみたい」

電話の向こうが一瞬にして静まり返り、それから慌ただしい足音が聞こえてくる。

「熱は何度だ?他に症状は?」健一の声は即座に医者モードに切り替わった――プロフェッショナルで、張り詰めた声に。

「わ、わからない……。頭がくらくらして、全身が寒いの」私は布団の中でさらに体を縮こまらせ、内心で自分の演技力に拍手を送った。

「今すぐ帰る」

十五分後、健一は白衣を着たまま寝室に飛び込んできた。彼は足早にベッドサイドへ歩み寄る。その表情は真剣で、心配に満ちていた。

「診せてみろ」彼はベッドの端に腰を下ろし、その細い指がそっと私の額に触れた。

その瞬間、私はこの茶番をやめてしまおうかと、本気で思った。彼の手の甲から伝わる温もりが、消毒液の清潔な香りと、微かな男性的なフェロモンを乗せて、肌に染み込んでくる。私の心臓は、本当に速く鼓動し始めた。けれど、それは熱のせいではなかった。

「確かに少し熱いな」健一は眉をひそめ、体温計を取りに立ち上がろうとする。「口を開けて」

「健一……」私は力なく彼の袖を掴んだ。「そばにいてくれない?すごく寒いの」

健一の動きが止まり、複雑な眼差しで私を見つめる。「毛布をもう一枚持ってくる。熱は明日の朝には下がるはずだ」

彼の手が私の手の甲に留まったのは三秒にも満たなかったけれど、その微かな震えははっきりと感じ取れた。あれは何? 緊張? それとも……?

「患者さんにも、そんなふうに優しくするの?」私は探るように尋ねた。

「これは違う」健一は私の視線を避ける。「君は休養が必要だ。私はうつるといけないから、客間で寝る」

慌てて部屋を出ていく彼の後ろ姿を見つめながら、私の感情はぐちゃぐちゃに絡み合っていた。彼は私を妻としてではなく、患者として扱っている。

一晩中眠れなかった。健一が私の額に触れた優しい手つきと、彼の瞳に浮かんだ一瞬の感情を、何度も頭の中で再生してしまう。「これは違う」とは、どういう意味だったのだろう。

午前三時、隣の客間で誰かが寝返りを打つ音が聞こえた。彼も眠れないのだろうか?

翌朝、ベッドサイドテーブルには解熱剤とメモが置かれていた。「平熱なら、もう薬は飲まなくていい」

それだけ。顔も見せずに、行ってしまった。

私はベッドの端に腰掛け、その冷たく他人行儀なメモを睨みつけ、まるで冷水を浴びせられたような気分だった。

昨夜の優しさは何だったの? 昨夜の心配は?

化粧部屋で、鏡に映るやつれた自分の顔を見つめているうちに、ふと気づいた――たぶん、家の中では、彼が逃げるのは簡単すぎるのだ。彼が簡単には立ち去れないシナリオが必要なのかもしれない。

もし私が仕事中に事故に遭ったら、夫として、彼はあの忌々しい「プロとしての距離」を保っていられるはずがないのではないか?

このじれったい駆け引きには、もううんざりだった。

今日で決着をつけなければ――彼が私に気があると認めるか、私が完全に諦めるか。

これが、最後。

午後二時。私は写真スタジオの螺旋階段の上に立ち、角度と力のかけ具合を頭の中で計算していた。この「事故」は、十分にリアルに見えなければならない。

「薫さん、次のシーンの準備、よろしいですか?」下からアシスタントの声が飛んでくる。

「今行きます!」私はわざと一段踏み外し、体のバランスを崩した。「あっ!」

足首に本物の捻挫の痛みが走るのを覚悟すると、涙が出るほど痛かった。もう、想像以上に痛い。

「大変だ!救急車を呼んで!」スタッフがパニックに陥る。

「救急車は要りません」私は痛みをこらえて歯を食いしばった。「夫を呼んでください。彼は医者なんです」

二十分後、健一はまたしても現れた。今度は救急箱を手にしている。彼は私の前に跪き、プロとして私の足首を診察し始めた。

「ここは痛むか?」彼は怪我をした箇所を優しく押し、眉をひそめた。

「んん……」私はわざとひどく痛がっているように見せたが、内心では奇妙な満足感を覚えていた――やっと、彼が私を真剣に見つめ、触れてくれている。「あなたは私の夫でしょう? あなたが手当てしてくれればいいじゃない」

健一の手が一瞬止まり、それからまた診察を続けた。「整形外科医に診てもらうべきだと思う。レントゲンを撮った方が安全だ」

「何だって?」私は信じられないという顔で彼を見た。「あなたが直接治療できないの?」

「君の夫として、過剰に心配してしまい、専門的な判断を誤る可能性がある」健一は私の傷ついた視線を避けた。「専門医に診てもらった方が安全だ」

過剰に心配? 私の心臓は一瞬で速くなった。これは、彼が私のことを気にかけていると認めたということ? でも、なぜ彼の口調はまだこんなによそよそしいのだろう?

「わかったわ」私は冷たく言った。「あなたの専門的なご意見に従うことにする」

健一は私の言葉に含まれた皮肉をはっきりと感じ取ったようで、その表情はさらに硬くなった。「病院へ行く車を手配する」

去っていく彼の後ろ姿を見ながら、私の心の中の不満と怒りは限界点に達した。

その後の数時間は、悪夢のようだった。健一が手配した車で病院へ運ばれ、見知らぬ整形外科医に診察され、レントゲンを撮られ、最終的にただの軽い捻挫だと告げられた。その全過程で、健一は一度も姿を見せなかった。

病院で緊急の対応をしなければならなくなった、と彼は言った。

真夜中、私はリビングのソファに一人で座っていた。足首には包帯が巻かれ、氷嚢を当てている。軽い捻挫とはいえ、足よりも心の方が痛かった。

健一がドアを開けて入ってきて、暗闇の中にいる私の孤独な姿を見た。彼の歩みがわずかに遅くなる。

「足首の具合は?」彼の声は、何かを邪魔するのを恐れるかのように、柔らかかった。

「お医者様はたいしたことないって」私は顔を上げずに答えた。「専門的なアドバイスをありがとう」

健一は私に説明書と痛み止めの薬を手渡した。「これはアイシングの指導書と痛み止めだ。指示通りに使うように」

見ず知らずの患者に使うのと同じ口調。私はついに顔を上げ、瞳には涙が光っていた。

「私は、そんなにあなたにとって不愉快な存在なの?」

健一は雷に打たれたかのように凍りついた。「何だと?」

「病院の患者さんに対する方が、私に対するより温かいじゃない!」私の声は震え始め、この間の不満と、失敗した試みの苛立ちが一度に噴き出した。「私はあなたの妻よ、患者じゃない!」

「不愉快なんかじゃ……ない」健一の声は低く、かすれていた。「状況が、複雑なんだ」

「複雑?」私は立ち上がり、氷嚢が床に落ちた。「自分の妻の面倒を見ることが、何が複雑だっていうの?」

健一の手が拳を握りしめ、指の関節が白くなる。私はこの細かな癖に気づいていた――彼が緊張したり、感情が高ぶったりすると、いつもこうして拳を握るのだ。

「君にはわからない……」と彼は言った。

「じゃあ説明してよ!」私の涙はついに溢れ出た。「私が何をしたっていうの? どうして私に一歩近づくより、距離を保つことを選ぶの?」

健一は私の涙に濡れた顔を見て、全身を震わせた。何かを言おうと口を開いたが、結局ただ首を振り、足早に二階へ上がってしまった。

去っていく彼の後ろ姿を見送りながら、私の心は完全に沈んでいった。

私は膝を抱えてソファに座り、静かにすすり泣いた。二度の試み、二度の失敗。病気のふりをし、事故を演出し、道化を演じた結果、さらに深い冷たさで返されただけだった。

私は本当に、何もかも考えすぎていたのだろうか。

おそらく彼は、私のことを本当の妻として見ることはないのだろう。彼の目には、私はただ「専門的なケア」が必要な同居人に過ぎないのかもしれない。

二階からドアが閉まる音がした――静かな夜の中では、柔らかく、しかし、ことのほかはっきりと聞こえる音。その音は、まるで彼が私たちの間にまた一つドアを閉ざしたかのようだった。

私は目を閉じた。契約結婚したこの四ヶ月間の努力が、すべて冗談になってしまったように感じた。私は妻として完全に失格だ。夫からの心からの抱擁を一つさえ勝ち取れないのだから。

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