第5章

恵理視点

翌朝、私は太陽が完全に昇る前から荷造りを始めた。

手はまるで自動操縦のように動いていた。ハンガーから服を外し、セーターを畳み、ベッドの上のスーツケースにすべてを詰めていく。アパートは、ジッパーの音と引き出しを開ける音以外、静まり返っている。

カーテンの隙間から陽光が忍び込み、スーツケースを照らす。昨夜の青いドレスは、まだクローゼットのドアに掛かったままだ。

これが結末。もっと早く気づくべきだった結末。契約からおとぎ話なんて生まれるはずがない。

昨夜、ドア越しに聞こえた彼の謝罪は空虚だった。何に対して謝っているの? 私が彼を愛してしまったこと? 彼の元カノが現...

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