第7章
三ヶ月後。
啓一は机のカレンダーを睨みつけた。九十二日目。
帆夏は昨日、帰宅しているはずだった。
彼女のプログラムは、出発からきっかり三ヶ月で終わる予定だった。啓一はその一日一日を、まるで囚人が壁に刻みを入れるように数え、カレンダーに印をつけてきたのだ。
だが、彼女からの電話はなかった。
その朝、彼は六度も彼女の携帯に電話をかけた。だが毎回、留守番電話に繋がるだけだった。
「相沢さん?」秘書がオフィスドアをノックした。「奥様から何かご連絡は?」
「ない」
「メルボルンの研修施設にもう一度連絡してみましょうか?」
「頼む」
彼はすでに二度、そのオースト...
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