第262章 毒ではない

「では、パスカル先生は? お姿が見えませんが」

 当初、王都からヴェルリット家領地へ戻る際、パスカル医師も同行していたはずだ。あのご老人のルカスへの溺愛ぶりを考えれば、ルカスが生きて戻ったと知って顔を出さないなどあり得ない。

 エリサは困ったように笑い、両手を広げてみせた。

「パスカル先生はルカス様のご生存を知るや否や、『ルカス様に適した薬を用意せねば』と仰って、数日前から薬房へ向かわれたままなのです」

 それを聞いて、アネルはほうっと安堵の息を吐いた。パスカル医師はこれまで、まるで慈愛に満ちた祖父のように、アネルの体を細やかに気遣ってくれていた。あれほど徳が高く、経験豊富な医師にル...

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