第265章 偉大なるご主人様のために

ハーヴェストサーカス団の団長は、よほどの潔癖症らしい。道中の揺れに耐え、さらには薄暗い地下牢に幽閉されるという境遇にありながら、髪を撫でつけ、後ろで束ねている。その顔には、隠しきれぬ疲労と憔悴の色が滲んでいた。

「あなたがハーヴェストサーカス団の団長ですね。お聞きしたいことがあります」

アネルが唐突に切り出すと、ぼんやりとしていた男の動きが止まる。男はすぐに鼻で笑い、顔を上げた。

「ヴェルリット公爵か?」

団長の声は嗄れており、アネルを見る目つきも決して友好的なものではなかった。

「もう少し長く閉じ込められると思っていたが、ずいぶんと早いお戻りだな」

「わたくしが足止めされること...

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