第272章 彼は悪人ではない

アネルも致し方なく、うつむくルカスに小声で何かを問いかけた。ルカスはきょとんとした後、はにかむように小さく頷く。それを見て、アネルは一枚の紙を取り出し、議論の止まないヴァーンカ家の人々の前に差し出した。

ヴァーンカ公爵がその紙を受け取る。そこには幼い子供特有のたどたどしい文字が並んでいた。公爵は長い時間をかけてそれを判読し、ようやく震える声で読み上げた。

「あしをなおしたいです。おじいさまや、おとうさま、おばさまみたいに、ソースていこくのためにたたかって、くにや、かぞくをまもりたいです。みんなをがっかりさせません」

「おお、ルカス!」

ヴァーンカ公爵夫人が駆け寄り、ルカスを力強く抱き...

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