第273章 後継者

物思いに耽っていたアネルは、袖をくいと引かれる感触にふと我に返った。

視線を落とすと、そこには不安に満ちたルカスの瞳があった。自分が悪いことをしたと思っているのか、片手でおずおずとアネルの袖を掴んだまま、もう片方の手で素早く紙に文字を走らせている。

アネルの元に戻ってからというもの、彼女は毎日欠かさずルカスの読み書きに付き合っていた。今では以前のように間違いだらけということはなくなったが、まだ指先に力が入らないのか、その筆跡はミミズがのたうつように歪んでいた。

「叔母様、僕がトーマスおじさんを庇うようなことを言ったら、怒りますか?」

アネルは困ったような笑みを浮かべ、ルカスの頭を優し...

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