第71章 家族

アネルは仰向けになった拍子に傷口を押してしまい、思わず息を呑んだ。サミラは慌てて彼女を引き起こし、うつ伏せにさせる。

「そんなに興奮しなくてもいいんじゃないか?」

「わたくしが低い身分の出だからこそ、母は莫大な持参金を持ってタイタン家に嫁ぐのが良いと考えたのです。後ろ盾であるヴェルリット家は公爵家で、タイタン家よりも格上ですから、彼らもわたくしに手出しはできないだろうと。それに、わたくしがお金を持っていけば、彼らは家の面倒を見てもらうためにわたくしを頼ることになり、倍にして大切にしてくれるはずだと……それに……」

アネルは言葉を切った。

「あの時、ホウデンは母に誓ったのです。生涯わ...

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