第5章
車がゆっくりと遠ざかっていく。その場に立ち尽くしていた広昭の胸に突如、強烈な不安が込み上げてきた。
彼は慌てて携帯電話を取り出し、夏希の番号を呼び出す。
『おかけになった電話は、電源が入っていないため――』
電源が切れている? 夏希は決して携帯の電源を切らない人間だ。
なぜだろう。今回ばかりは本当に、夏希と永遠の別れになるような気がしてならない。
その予感があまりにも強く、呼吸さえままならないほどだ。
「夏希!」
唐突に叫び声を上げると、彼は狂ったように黒塗りのセダンを追いかけた。
だが、生身の人間が車に追いつけるはずもない。数歩走ったところで車は街角を曲がり、...
ログインして続きを読む
チャプター
1. 第1章
2. 第2章
3. 第3章
4. 第4章
5. 第5章
6. 第6章
7. 第7章
8. 第8章
縮小
拡大
