第7章

 肺から空気が一瞬で抜け落ちた。血が、血管の中で完全な氷へと変わっていく。

「……拓実?」

 息を呑んで問いかけた声は、恐怖でひび割れ、かすれた囁きにしかならなかった。

 彼は差し込む細い陽だまりから動かなかった。ただ、胸が張り裂けるほど悲しげで、それでも優しい笑みを浮かべるだけだ。

「ここにいるよ、絵理。」

 頭の中で何かが乱暴にショートした。記憶が網膜に焼き付いている――暗く湿ったワインセラー、重たい真鍮の火かき棒、頭蓋が潰れる生々しい、ぬめった嫌な感触。

 私は必死に後ずさりし、背骨を布張りのヘッドボードへ強く押しつけた。膝を胸まで抱え込むと、ナイトテーブルの豪奢な白百合の...

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