第11章 興ざめ

伊沢赤司はそれを聞いた瞬間、あからさまに顔を曇らせた。

「じゃあ、誰ならお前の気を引けるんだ。宮本西衛か?」

綾部栞は淡々と答える。

「少なくとも、あなたじゃないわ」

そう言い残すと、彼女は主寝室に背を向けた。

「私は客間で寝る」

一歩、部屋の外へ出ようとしたその瞬間、背後から肩をつかまれる。

大きな掌は、じんわりと熱を帯びていた。

綾部栞の足が止まる。どくん、と心臓が強く脈打った。胸の奥がひりついて、痺れるように張る。なんとも言えない不快な痛みだった。

「お前……」

低く沈んだ声。わずかに怒気を含んでいた。だが最後まで言い切る前に、スマートフォンの振動音が割り込む。

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