第12章 直接に彼女に感謝する

温もりの残る腕の中から離れた途端、綾部栞はぶるりと寒気に襲われた。慌てて布団のぬくもりへ潜り込み、身を翻して男に背を向ける。

目尻から雫がひとつ滑り落ちた。闇に溶けて、音もなく。

目が覚めたとき、隣にいるはずの男の姿はもうない。胸の奥に刺さるものをそっと隠し、起き上がって洗面を済ませ、身支度を最低限整えると階段を下りた。

リビングのソファには伊沢赤司が座っていた。二階から足音が降りてくるのを聞き、彼はちらりと視線を上げる。

綾部栞は淡い色のデニムに、飾り気のない白いシャツ。髪はポニーテールにまとめていて、全身からみずみずしい若さが立ちのぼっていた。

ソファの男を見つけ、彼女の歩みが...

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