第14章 ダブルスタンダード

綾部栞は宮本西衛との通話を終えると、バルコニーへ出て息を整えた。

伏せた視線の先、庭から出ていく伊沢赤司の姿が目に入る。

男が車へ歩み寄り、ドアを開け、エンジンをかけて去っていくのを、栞は黙って見送った。唇の端が、かすかに吊り上がる。淡い嘲り。

――結局、佐野小雪を病院に一人で残したまま、バレンタインを過ごすのは嫌だったのだろう。

息を沈めた瞬間、鼻の奥がつんと痛んだ。目の縁がじわじわと熱を帯び、膨らむように重い。

栞はそっと下唇を噛み、込み上げる酸っぱさを力づくで押し込める。そして踵を返し、室内へ戻ってスマホを手に取った。姉へ電話をかける。

「お姉ちゃん。前に探してくれた離婚の...

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