第15章 彼は永遠に彼女を愛することはない

綾部栞は目を上げ、皮肉を含んだ彼の視線を受け止めた。ほんの一拍だけ間を置き、すぐに目を逸らす。

「ご安心ください、伊沢社長。たとえ恋をしたくなったとしても、離婚してからです。ちゃんと筋を通して、堂々と恋愛します」

そう言って、赤い唇の端をわずかに上げる。ついでのように机の上のカルテを手に取り、ぱらりとめくった。

「私のせいで伊沢社長のお立場を汚すようなことはしません。ほかにご用がないなら、仕事に戻ります」

もう彼を見ることはない。澄んだ瞳は、相変わらず穏やかだった。

伊沢赤司の顔つきが、さっと冷える。

綾部栞はすでに意識を仕事へ切り替えていた。完全な無視――そう言っていいほどに。...

ログインして続きを読む