第23章 彼を運転手扱いする

綾部栞はその場に立ち尽くしたまま、伊沢赤司の背中を見送った。ふっと眼差しの色が薄れ、そのまま浴室へ入っていく。

身支度を整えて出ると、寝室の前に使用人が立っていた。恭しく、作り慣れた笑みを浮かべている。

「若奥様、お部屋のお掃除に参りました」

栞は小さくうなずいた。

「お願いします」

「いえ、これも務めでございますので」

栞はそれ以上何も言わず、寝室を出た。数歩進んだところで足を止め、振り返る。そして静かな声で告げる。

「部屋の中のアロマ、片づけておいて」

使用人はきょとんとした顔になった。

その香りは、もともと栞が自分で選んだものだ。新居でもずっと同じものを使っている。栞...

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