第25章 あまり役に立てない

佐野小雪はふっと笑い、少し興味ありげに口にした。

「彼氏さんがお迎えですか?」

綾部栞は答えず、そのまま佐野小雪の病室を出ていった。

その後ろ姿を見つめながら、伊沢赤司の目がわずかに深くなる。

佐野小雪は赤い唇の端を上げ、伊沢赤司へ視線を向けた。

「赤司さん。綾部先生とは兄妹みたいなものなんでしょう? 綾部先生の彼氏って、会ったことあるんですか?」

伊沢赤司は冷えた目のまま、短く答える。

「ない」

言い終えると、腕時計へ視線を落とし、低く言った。

「まだ用がある。先に失礼する」

佐野小雪は引き留めようとした。けれど言葉になる前に、男はもう病室を出ていた。

その足取りは妙...

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