第28章 彼は彼女を仕事に送っていくことに格別に熱心だ

綾部栞は彼を一瞥し、小さくうなずいた。

「おばあさまの具合がもう少し落ち着いたら、私から話すわ」

――いつまでもここに居座るわけにはいかない。

今日など使用人が、ゴミ箱の中身まで確認していた。もしこのまま一か月も滞在すれば、生理が来ないことに気づかれ、おばあさまに勘づかれるのは時間の問題だ。

伊沢赤司は表情ひとつ変えず、「ああ」とだけ返すと、そのまま車を降りて屋敷の中へ向かった。

胸の奥が、理由もなくざわつく。足取りまで妙に速い。

綾部栞はその背中を見送り、こっそり息を落としてから車を降りた。急がず、慌てず。平静を装って屋内へ入る。

先ほど伊沢赤司の帰宅に気づいた執事が挨拶をし...

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