第36章 彼とは何の関係もない

料亭に着くと、坂東補佐は車を店先に横づけした。

すぐに店のドアマンが恭しく歩み寄り、ドアを開ける。

綾部栞は車を降りると、個室の番号を告げた。

係の女性が丁寧に案内し、綾部栞を個室へと先導する。

個室の扉は閉まりきっていなかった。だから綾部栞は、まだ数メートル手前だというのに、室内から漏れてくるからかうような笑い声を聞いてしまった。

「伊沢社長、あんなにお忙しいのに小雪を迎えに行くなんて。本気で大事にしてるってことじゃないですか」

伊沢赤司は低く淡々と返す。

「たまたま通り道だっただけだ」

前を歩いていた案内係の手を、綾部栞はとっさに掴んだ。もういい、というように目で合図する...

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