第56章 離婚証明書は受け取ったの?

夜。

伊沢赤司は綾部父と階下で話し込んでいた。話題のほとんどは仕事絡み――商売のことばかりだ。

綾部栞にはさっぱり分からない。ひとつもついていけず、早々に二階へ上がった。

綾部父が休んだあと、伊沢赤司も遅れて部屋へ戻ってきた。

綾部栞は先に身支度を済ませ、もうベッドに入っていた。男が何事もない顔で入ってくるのを見て、こほんと小さく咳払いする。どこか落ち着かない。

「……あなたはソファで寝て」

もう離婚協議書には署名している。

なのに、これまで通り同じベッドで眠るなんて――綾部栞にはどうしても受け入れがたかった。

だが伊沢赤司は答えず、そのまま浴室へ入っていく。

綾部栞は紅い...

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