第9章 本当にうらやましい感情だな

綾部栞は、期待に満ちた佐野小雪の顔を静かに見つめ、ゆるりと言った。

「嘘よ」

佐野小雪の表情がぴたりと固まり、どこか探るような目で綾部栞を見る。

「じゃ……じゃあ、手術したら……そのあと、妊娠しにくくなったりするんですか?」

声はかすかに震え、今にも泣き出しそうなほど弱々しい。

相手がただの患者だったなら、綾部栞だってもう少しくらい慰めの言葉をかけていたはずだ。けれど、佐野小雪は違う。恋敵だった。

綾部栞は表情ひとつ変えず、淡々と告げる。

「絶対はありません。ですから佐野さんも、その可能性は覚悟しておいてください」

言い終えると、そのまま佐野小雪の脇を通り過ぎる。

――本当...

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