第19章 知っていてわざとやる

霧島絢香は言葉を失った。――この男、どこまで面の皮が厚いの。

正直関わりたくなかったけれど、疲れが限界で、相手にする気力すら残っていない。

絢香は掛け布団の端だけをめくり、わざわざ距離を取って横になった。

二人の間には、もう一人寝られるほどの隙間。部屋に漂うのは、ただ淡い疎遠さだけだった。

そのとき。

ぶぶっ――九条雅人のスマホが震えた。

画面に浮かんだ「陽菜」の二文字が、やけに目に刺さる。

雅人は起き上がり、ベランダへ出て電話に出た。

向こうが何を言ったのかは分からない。けれど雅人の声が、急に尖る。

「……今すぐ行く。動くな」

通話を切るなり着替え、コートを掴んで外へ向...

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