第28章 あいつの車から降りろ

九条雅人はふっと冷笑を漏らし、舌先で奥歯の付け根をなぞった。瞳の底はどんよりと淀み、陰が張りついている。

――やはり、この女は俺の警告など欠片も気にしていない。

車内。

霧島絢香は唇をきゅっと結んだまま黙っていた。ただ、腰に残る男の指の温度だけが、いつまでも消えない気がして、胸の奥がざらつく。

本人と同じくらい、鬱陶しい。

どうして離婚するって決めたのに、九条雅人は外ではあんなふうに仲睦まじく振る舞うのか。絢香には理解できない。

男の本能に染みついた、独占欲――そういうものなのか。

「まだ英昭おじさんのこと考えてる? それとも九条雅人が変に勘ぐるのが心配?」

桜井誠治が、彼女...

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