第36章 俺が追いかけた

霧島雪乃の顔からも、ゆるやかに笑みが消えていった。心配そうな視線のまま、ぽつりと言う。

「そうよね……あの子があんなふうになるの、私も初めて見たわ」

その言葉に、霧島絢香はそっと目を伏せ、指先でスプーンを握り締めた。胸の奥に、言葉にできない酸っぱさが込み上げる。

原因なんて、分かりきっている。

桜井陽菜のところで、また何かが起きたのだ。

けれど両親の前では、動揺を見せるわけにいかない。霧島絢香は無理に口角を上げ、平静を装った。

「たぶん会社の案件がちょっと立て込んでて。最近ずっと忙しいみたいなの。今日は本当、合間を縫って来てくれただけだし……大丈夫だよ、お父さん、お母さん。ほら、...

ログインして続きを読む