第45章 親友がぶりっ子を怒鳴りつける

中村はまだ何か言いたげだったが、口を挟む隙は与えられなかった。

しばらくして、黒のカイエンが桜井陽菜のアパート前にすっと停まる。

だが九条雅人はすぐには降りない。指の腹でハンドルを無意識になぞりながら、瞳の奥に――自分でも整理しきれない苛立ちを渦巻かせていた。

「雅人!」

澄んで甘い声が、不意に夜気を切った。

少し離れた場所に、桜井陽菜が立っている。

高級車を一目で見分けた彼女は、ぱっと顔を輝かせた。

「やっぱり。私のこと、怒ったままじゃいられないんだね。ねえ、晩ごはんは食べた?」

九条雅人はドアを開けて降りる。周囲の空気が一段と冷え、桜井陽菜の笑みがほんの一瞬だけ固まった。...

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