第48章 顔を立てない

その瞬間——ロビーの空気が、凍りついたように重くなる。

霧島絢香は受付の動揺など気にも留めず、スマホをしまっただけだった。

きょろりと見回せば、会社のロビーは隅々まで几帳面で、規律の匂いがする。九条雅人らしい。冷たく、容赦がないほど厳格で。

ほどなくして。

「チン」

エレベーターが開く。

現れたのは、九条雅人の長身だった。

険しい表情のまま降りてきて、近寄りがたい低い気配を纏っている。鋭い視線がロビーをひと撫でし、最後に霧島絢香へと突き刺さった。

——ざわっ。

周囲の社員が息を呑む。

社長が、自ら迎えに?

九条雅人は眉間をさらに深く刻み、一直線に歩み寄ると、彼女の手首を...

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