第52章 招かれざる来訪者

九条雅人が昨夜戻った頃には、すでに深夜を回っていた。本邸で起きている者など、誰ひとりいないはずだ。

それなのに——中村が、自分が酒を飲んだと知っている?

「この……二日酔い用のスープ……」

思わず、雅人の視線が階段口へ流れる。

中村は穏やかに笑った。

「昨夜、若奥様がわざわざ私に言いつけてくださいまして。若様はお酒を召し上がると、朝つらくなるからと」

ふっと、九条雅人の冷ややかな顔に、温度が差した。

保温ポットを受け取る。指先に伝わるぬくもりが、胸の奥まで染みていくようで——張り詰めていた空気が、わずかにほどけた。

車に乗り込むと、秘書が彼の珍しく柔らいだ横顔を盗み見て、恐る...

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