第56章 海外へ行くことになった

その声を聞いた瞬間、霧島絢香は全身がぴたりと強張った。

声のしたほうへ視線を向けると、そこには桜井誠治がいた。穏やかに笑みを含んだ瞳が、まっすぐ彼女を捉える。

「誠治さん? ここにいたんだ」

誠治の隣には、スーツ姿の男が数人。どうやら商談中らしい。

桜井誠治は彼女の驚きに気づいたのか、淡い色の瞳で店の外を一瞥する。ほかの車は見当たらない。ふっと笑い、取引先に向かって先にコーヒーをどうぞ、と手で促した。

それから絢香へ、静かに尋ねる。

「どうしてここに?」

霧島絢香は反射的に、少し乱れた髪を耳にかけた。無理に口角を上げる。

「えっと……通りかかったから。ちょっと、アフタヌーンテ...

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