第59章 彼女は妊娠した?

二人の間の空気が険悪だと察した霧島絢香は、慌てて一歩前に出た。

「誠治さん、どうしてここに?」

桜井誠治はごく自然に、彼女の髪を指先でそっと耳にかけてやる。

「行こう。祝杯でもあげよう」

霧島絢香は振り返りもしないまま、そのまま車へ乗り込んだ。

パガーニが唸りを上げて遠ざかっていくのを見送りながら、九条雅人は舌先を頬の内側に押し当て、ゆっくりと手をポケットへ滑り込ませる。

……ふん。霧島絢香、やってくれる。

十分後。

霧島絢香は銀行の近くで停めるよう、桜井誠治に告げた。

彼女は迷いなくキャッシュカードから現金を全額引き出し、すべてを自分の隠した海外口座へ送金する。用の済...

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