第9章 本当に妊娠していない

霧島絢香は蒼い瞳を伏せ、深く息を吸い込んだ。

「田中さん、荷物をお願い。私はトイレで採取してくる」

そう言い終えるより早く、田中さんの返事を待たずに足早にトイレへ入る。

ここはプライバシー管理が徹底している。九条家の人間がいたとしても、個室までついてきて見張ることなどできない。

個室の扉に背を預けた瞬間、鼓動が跳ね上がった。

――どうする?

田中さんは外で待っている。しかも九条雅人は、結果を確実に押さえるために専任の人間まで付けているはずだ。

前も後ろも塞がれている。逃げ道がない。

霧島絢香は奥歯を噛みしめた。

そのとき――。

じゃあっ、と隣のブースで水が流れる音がした。...

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