第34章 長谷川遥斗の筆致

諏訪詩織が事務所に駆けつけたとき、目に飛び込んできたのは荒れ果てたオフィスだった。

机も椅子も、パソコンも。壊せるものは片っ端から叩き壊され、床には破片が散らばっている。

詩織は息を詰めたまま足早に奥へ向かい、牧野徹の執務室の扉を押し開けた。

パソコンの向こう側に、男がいる。何事もなかったかのように椅子に座っている。

その姿を見た瞬間、胸の奥の力がようやく抜けた。

「……大丈夫?」

外傷はなさそうだ。物は壊されたが、人が無事ならそれでいい。

牧野徹は詩織を見て一瞬目を見開き、すぐに察したように眉を寄せる。

「秘書がまた君に連絡したのか。余計なことを……」

言葉には露骨な不機...

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