第56章 まさか君だったのか!

長谷川遥斗は口元に冷たい笑みを浮かべると、手を伸ばして諏訪詩織を腕の中へ引き寄せた。

「俺が行けないなら、詩織も行く暇なんてない」

脅しの意図が、あまりにも露骨だった。

牧野徹の顔色が、一瞬で鍋底みたいに黒く沈む。殺気すら滲む目つき。

――卑怯者め。

諏訪詩織は眉を寄せ、長い睫毛を落として目元に淡い影をつくった。

「……あなたが来るのはいい。でも、あとで外で待ってて。会議には入らないで」

長谷川遥斗がどれだけ面倒な男か、彼女は嫌というほど知っている。ここで拒めば、今日は家を出ることすらできない。

譲歩を引き出した長谷川遥斗は、内心で愉悦を噛みしめる。牧野徹へ向け、わざとらしく...

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