第58章 本当に俺が何も知らないと思っているのか?

「顔色がよくない。先に控室で休んで。稲川さんをお見送りしたら、すぐ戻るから」

牧野徹は、見送りに出ようとした諏訪詩織の手首をそっと引き留め、低い声で言い含めた。

詩織もさすがに疲れが溜まっていたのだろう。これ以上は無理をせず、彼らが部屋を出ていくのを見届けてから、机の上のデザイン画をまとめてファイルに挟んだ。

――さて、自分も戻ろう。

ドアへ向かった、その瞬間。

すっと伸びてきた腕に進路を塞がれた。

牧野旭が、薄く笑って立っている。笑っているのに、目だけが苛立ちを孕んでいた。

「俺の『いい話』をぶち壊しておいて、はいさようならってか?」

最初は詩織など眼中にない、という顔だっ...

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