第64章 無理やり薬を飲ませる

諏訪詩織が別荘に戻るなり、宅配便が一つ届いた。

封を切ると、中身は賃貸契約書一式。

差出人の名前を目にした瞬間、胸の奥がすっと冷える。――やっぱり。

詩織は迷わず牧野徹徹に電話をかけた。

受話器の向こうから聞こえたのは、笑みを含んだ穏やかな声。けれど背後に人の気配や紙をめくる音が混じっていて、向こうが仕事の最中なのもすぐわかった。だからこそ、詩織は要点だけを切り出す。

「気を遣わせちゃって、ごめん。家賃、いくら? 今すぐ振り込む」

「いいよ。前に大きな借りがあるし、これはそのお礼。大した額でもないから」

詩織はずっとファッションスタジオを開きたいと思っていた。けれど場所が見つか...

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