第164章 利用される駒

電話をかけてきたのは、やはり中村信だった。

ベンチに腰を下ろした彼は、床にぐったりと横たわる佐藤奈須へ冷ややかな視線を投げかける。その瞳の奥に宿るのは、底知れぬ嫌悪だけだ。

彼は、鈴木七海の狼狽を期待しているのだ。

あの女も母親と同じように、愛に縛られ、愛のために犠牲になるはずだ、と。

一度そうなれば、鈴木七海は永遠に彼の支配下から逃れられない。

だが、スピーカーから響いた鈴木七海の声は予想に反して軽やかで、微かな笑みさえ滲んでいた。

「悪いけど、今すごく忙しいの。足手まといがいなくなって、おまけに莫大な遺産まで手に入るんだもの。今の私、誰よりも幸せだわ」

話しながらも、鈴木七...

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