第205章 よりによって鈴木七海

鈴木七海の潤んだ黒い瞳が、淡い光を湛えて揺れる。彼女は彼の反応を期待するように見つめていた。

「佐藤奈須、答えは?」

佐藤奈須の胸が、ぎゅっと締めつけられる。

彼女が自分から離れ、次第に遠ざかっていく。それをただ車椅子の上から、部外者のように眺めることしかできないのか。他の男のもとへ駆けていく彼女を。

恋人同士のように親密に寄り添い、自分以外の男に笑顔を見せる彼女……。

駄目だ、嫌だ。

あんなに潔く彼女を手放すことなんて、やはり俺にはできそうにない。

彼女は俺の愛しい人だ。絶対に手放したくない。

佐藤奈須は彼女を腕の中に閉じ込め、二度と消えてしまわないようにと強く抱きしめた。...

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