第206章 産業スパイ

寒川行雄は最後のページに目を落とし、佐藤奈須が交通事故で両足を失ったという記述を見つめていた。

彼はぱちぱちと瞬きをした。胸の奥で、あるどす黒い期待が鎌首をもたげる。

もしそうなら、自分にもまだつけ入る隙があるのではないか?

なにしろ、佐藤奈須はもう廃人同然なのだから。

しかし、佐藤奈須は遺言ですべての財産を鈴木七海に譲ると記している。鈴木七海がどうしても彼のそばを離れようとしないのも無理はない。

あるいは、二人の間にあるのは真実の愛なのだろうか。

だが、万が一にも鈴木七海が彼に愛想を尽かす日が来るとしたら……。

寒川行雄の心に、再び身勝手な僥倖への期待が湧き上がる。

「父さ...

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