第23章 彼のそばにいるのは彼女

中村健は彼女に腕を引かれ、会議室のドアを開けてそのまま出て行った。

二人は談笑しながら、どちらも彼女を一瞥だにしなかった。

鈴木七海は心に冷たいものが走るのを感じながら、テーブルの上の書類を片付けた。

ちょうどその時、彼女のお腹がぐぅ、と数回鳴った。この時間になれば、とっくに空腹のはずだ。

中村健が鈴木南と食事をしている一方で、自分は空腹のままここで残業しなければならないと思うと、思わず胸がずきりと痛んだ。

結局のところ、中村健の隣に立つ女性は鈴木南であり、この五年間の自分は、ただの彼の助手でしかなかったようだ。

彼女は書類を抱えて会議室を出て、自分のデスクに戻った。

その時、...

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