第24章 高枝に登る準備

本来彼女の席であるはずの助手席には、今、鈴木南が座っていた。

鈴木南は当然といった顔でそこに座り、薄ら笑いを浮かべている。

それは勝利者の笑みだった。その目尻や眉尻には、得意満面な様子が滲み出ていた。

鈴木七海の心は冷え切っていたが、表情は依然として凪いだままだ。

彼女は中村健には目もくれず、佐藤奈須に淡々と言った。「行きましょう」

佐藤奈須は肩をすくめ、おどけた様子で「どうぞ」と促す仕草をした。

二人はどちらも中村健を一瞥だにせず、まるで彼が元から存在しなかったかのように振る舞う。

中村健の胸に、言葉では言い表せない喪失感が広がった。まるで誰かに大きな穴を穿たれたように、がら...

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