第241章 佐藤拓実の嫁

後方の席から数人がぽつりぽつりと値をつけ始めた。四億に達しても、鈴木七海はまだ札を挙げない。

六十億の時にも、鈴木七海は動かなかった。

八十億になり、入札者がわずか二、三人に絞られたところで、彼女はようやく手元の番号札を掲げ、争奪戦に加わった。

室林繁の想像をはるかに超える落ち着きぶりだった。

室林繁は彼女に顔を向け、意味深長な視線を送る。

彼とは対照的に、鈴木七海は彼の一挙手一投足など一瞥もくれず、ただまっすぐに壇上を見据え、次々と番号札を挙げ続けた。競り値は瞬く間に九十億を突破した。

ここで、室林繁の傍らに控えていた室林司がたまらず身を乗り出し、兄の耳元で囁いた。

「兄貴、...

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