第25章 今はもう好きじゃない

やはり、佐藤奈須は彼女をマンションの前まで送り届けた。

彼女が車を降りても、彼はなおも笑みを浮かべたまま口を開いた。

「覚えたからな。次は直接ここに迎えに来る」

鈴木七海の表情は冷たく、彼を無視してまっすぐ建物の中へと入っていった。

疲れた。本当に疲れた。もう一言も口にしたくなかった。

マンションに戻ると、彼女は無意識に大きな窓の前に歩み寄り、カーテンを閉めようとした。

ふと、階下に目をやると、佐藤奈須がまだ帰っていないことに気づいた。

彼の赤いポルシェが目に痛いほどそこに停まり、ヘッドライトが点滅して、どこか幻想的な光を放っている。

窓際に立つ彼女の姿が見えたのか、彼は上に...

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