第350章 過去の人

佐藤奈須をこれほどまでに想う鈴木七海の姿を目の当たりにして、吉田陽斗の胸の奥に酸っぱい感情が込み上げ、その瞳には抑えきれない寂寥の光がよぎった。

これが、鈴木七海と佐藤奈須の間に結ばれた絆なのだ。

部外者が入り込む余地など、永遠に存在しない。

かつては鈴木七海に対して一縷の望みを抱いていた彼だったが、今となってはっきり分かった。自分も、山下真衣も、そして林原宏でさえ、彼女にとっての最適解ではなかったのだ。

彼らは皆、鈴木七海のために命を含めたすべてを投げ出すことなどできなかった。背負っているものが多すぎたのだ。

だが、佐藤奈須にはそれができる。

吉田陽斗は瞳の奥の落胆を巧みに隠し...

ログインして続きを読む