第47章 物が汚れた

彼女はただ大きな瞳を潤ませ、中村健をじっと見つめている。その姿は、誰が見ても庇護欲をそそられるものだった。

「健兄さんは、お姉ちゃんを信じて、私のことは信じてくれないのですね。だからあの契約書を差し止めたのでしょう」

彼女は一呼吸置いて、続けた。「健兄さんはいつも公私をきっちり分けていらっしゃるのに、どうして今はそれができないのですか?」

中村健の顔つきは依然として険しく、冷ややかに口を開いた。「あの契約書には不備があった」

鈴木南は目尻の涙を拭い、唇をきゅっと結んだ。「あの契約が成立すれば、毎年会社に数億の利益をもたらすんですよ。それに、私と山本社長はとても親しいんです。彼が私を陥...

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