第130章

「話すことなんて何もないわ」

 水無瀬柚季は拒絶の姿勢を崩さない。

 だが、鷺沢雪紘も一歩も譲らなかった。

「無理に何かを約束させようなんて思ってない。ただ、機会が欲しいんだ。俺の話を聞いてくれ。たった一言でもいいから」

 このままでは立ち去ることもできず、騒ぎ立てて光ちゃんに気づかれるのも避けたい。

 柚季は仕方なく折れた。

「……言って」

「チャンスをくれないか。もう一度、やり直すチャンスを」

 その言葉を口にしたとき、雪紘は自分の声さえ聞こえていなかった。

 聞こえるのは、早鐘のように打ち鳴らされる心臓の音だけ。

 その感覚は、かつて初めて愛を告白したときにも劣らぬ...

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