第149章

 椎葉櫂は、その答えに少しも驚かなかった。残酷ではあるが、真実を突きつけないわけにはいかない。

「自分だけの幻影の中で生きるのは勝手だが、死んだ水無瀬柚季まで安らげなくするのはどうなんだ」

 遺体が見つからないのは仕方ないとしても、墓標すらないのでは、誰も弔うことができない。語りかける場所さえないのだ。

 人は死ねば、土に還り安らかに眠るもの。

 だからこそ、古来より遺体のない死者には衣冠塚が作られてきたのだ。

「彼女の魂を、彷徨わせたままにするな」

 鷺沢雪紘は手の中にあるピンク色の熊のぬいぐるみをじっと見つめ、答えた。

「そんなことさせるものか。彼女は戻ってくるんだから」

...

ログインして続きを読む