第160章

叢雲司と叢雲夫人は、あまりのことに呆気にとられていた。

「何を騒いでいるんだ? それは本当か?」

 叢雲司はこれまで、息子が特定の女性に好意を寄せている姿など見たことがなかった。それゆえに、子供の結婚については本気で頭を悩ませていたのだ。

「本当だって、マジで!」

「その娘は、どんなご尊顔なんだい?」

 夫人が興味津々といった様子で身を乗り出す。

「知らないよ、会えなかったんだから」

 叢雲颯は頭をポリポリと掻いた。

「本来なら顔を拝めるところだったのに、兄貴がいきなり飛び出してきて、俺を追い出したんだよ」

 彼はひどく残念そうだった。

 顔は見えなかったが、あの静かな佇...

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