第162章

「欲張りで何が悪いのよ? 欲張りで結構!」

 もう還暦も近いというのに、兄の前ではまるでわがままな少女のようだ。

 叢雲司は降参したように両手を上げた。

「はいはい、わかった。お前は欲張りで偉いよ。俺が悪かった、もう言い争うのはやめよう」

 叢雲夫人はふんと鼻を鳴らす。

「当たり前よ」

 水無瀬柚季は、そんな二人のやり取りを微笑ましく見つめていた。

 これが、家族というものなのだろう。

 遠慮なく憎まれ口を叩き合っても、何を言っても、決して本気で怒ったりしない関係。

 叢雲司は、叢雲柚斗から水無瀬柚季が入院していることを聞きつけ、わざわざ彼女と碁を打つためだけにやって来たの...

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