第174章

光は走り出し、ママの服の裾をぎゅっと掴んだ。その大きな瞳には、すでに涙が二粒、今にも零れ落ちそうに溜まっていた。

「ママ……」

 だが、その人が振り返った瞬間、光はハッとした。

 それは、全く見知らぬ他人の顔だった。

 裾を握りしめていた手が、力なく離れていく。

 ママじゃない。

 女性は困ったように、けれど優しく微笑んだ。

「お嬢ちゃん、人違いよ」

 遅れて駆けつけた鷺沢雪紘は、慌てて光を自分の元へと引き寄せた。女性へと顔を向けた彼の視線もまた、一瞬凍りついた。

 顔こそ全くの別人だが、その背格好は彼女に瓜二つだったのだ。

 彼は平静を装い、短く言った。

「申し訳あり...

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