第149章 無形の危機

エレベーターの扉が閉まる。

数字パネルの前に立った黒田洋二は、伏し目がちに一階のボタンを押した。その所作には一分の隙もない。

轎内の照明が神宮寺蓮の冷ややかな横顔を照らし出す。「愛人」という言葉を聞いても、彼の表情はピクリとも動かない。むしろ、喉の奥から微かな嘲笑を漏らしただけだった。

「そうか?」

神宮寺直人は笑った。

「ああ、そうさ。あの情報屋の話じゃ、話の辻褄が合いすぎてる。お前らが五年も前からデキてたってな」

正確な数字が出たことで、神宮寺蓮は即座に悟った。神宮寺直人は何らかの確信的な情報を掴んでいる。そうなれば、西園寺希美の身が危ない。

彼は隣に立つ神宮寺直人に視線を...

ログインして続きを読む