第165章 全ては彼女のために

西園寺希美はその言葉を聞くと、机についた指先を震わせた。それは無意識の反応だった。彼女は唇を噛み締め、うつむき加減に言った。

「分かっているわ」

西園寺雅史は彼女のその様子を見て言葉を切り、驚きの色を浮かべた。

「知っている? 蓮が話したのか?」

「ううん」

希美は唇を引き結び、二の腕をさすった。ニットのカーディガンを羽織っているのに、芯から冷えるような寒さを感じていた。

「あの人は何も言ってない。でも、なんとなく分かるの」

言いながら、彼女は先ほど病院の入り口で目撃した光景を脳裏に焼き付けていた。奥歯を噛み締めなければ、声が震え出しそうだった。

だが言葉が落ちるのと同時に、...

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