第90章 退院

西園寺玲奈はその夜、激しい癇癪を起こした。だが、黒田洋二は西園寺家の人間ではない。彼は玲奈が暴れる様を冷静に見つめていたが、彼女が投げつけた小箱がその目尻をかすめ、傷を作った。

黒田洋二の目尻に浮かぶ傷を見て、西園寺玲奈はようやく夢から覚めたように手を止めた。

黒田洋二という男が、神宮寺蓮に付き従ってもう七、八年になることを思い出したからだ。彼は神宮寺蓮の「顔」とも言える存在であり、誰もがその顔を知り、誰も彼を軽んじることはできない。

実際のところ、黒田洋二の傷はさほど深くはなかった。だが、本来ならばあってはならない不始末であることは明白だ。

黒田洋二は変わらず恭しい態度を崩さなかっ...

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